2011年1月29日土曜日

スマートフォン・ブーム

暮れにauのスマートフォンIS03を買った。

IS03

それまでスマートフォンは2年前に買ったwillcom03を使っていたので、03から03に乗り換えたという訳だ(メーカーはどちらもシャープ)。

willcom03

気持ちとしては「やっと」という感じだ。

au回線を家族契約していることと、willcom03の契約が2年縛りだったことから、iPhoneの流行を横目で見ているしかなかったのだが、auが(ようやく)本格的なスマートフォンを出してくれたことでやっと乗り換えることができた(ついでにケータイと2台持ちの状態も解消できた)。


willcom03はいろいろと使いにくいところが多かった。

問題の根本はWindows Mobile。インターフェースの基本がスタイラスを使ったペンオペレーションを前提としている。

もっともこれはさまざまなアプリを入れることでiPhone風のタッチオペレーションに変えることができる。それよりも大きな問題はOSの不安定さで、ほとんど毎日一回以上は端末を再起動していた。

いろんなアプリを入れてインターフェイスや操作性の改善を図っていたので、そのアプリどうしが衝突していたのかもしれないし、それともOSの根本的な問題だったのか、そこは判然としないままだったが。

それに加えて、PHS回線なので通信スピードが遅い、ネットにアクセスするたびにいちいちダイヤルアップする、画面が小さいなど、不満はいろいろとあった。


逆に、魅力だったのはその安さだ。

ウィルコムにはネット定額3,880円のプランがあるので、通話専用のauケータイと組み合わせればかなり安い運用ができる。auケータイでネットをPCサイトビューアも含め上限まで使えば、基本料と合わせて合計約7,000円かかるが、ウィルコム定額プランとの組み合わせなら約5,000円で済むのだ。

また、キーボードがついているので文章を書くことの多いぼくにとっては非常に便利だったということもある。


ともあれ、これでようやく本格的なスマートフォンを手に入れることができた訳だ。

ところで、IS03を手にすると思い出すのは10年ほど前に流行ったPalmのことだ。

PalmV

サイズも形態もいま主流のスマートフォンとほぼ同等で、アプリ(palmwareと呼ばれていた)も豊富に供給されていた(そもそもサードパーティの開発環境を整備することによってアプリ市場を活性化させ、それをハードウェアの魅力づけに活用しようというのはPalmがはじめた戦略だった)。

一時は本家のPalm社をはじめ、ソニーなども互換製品を次々発売して市場が相当盛り上がった(ぼくも6年間で4機種を乗り換えていた)。


スマートフォンとの最大の違いはと言えば、通信機能がなかったことだ(末期にはソニーが通信機能の付いたものを出していたが、通話機能はなかった)。

現在の多くのスマートフォンと同様タッチオペレーションだったが、基本は(Windows Mobileと同じく)スタイラスによるペン操作だった。もっとも、当時からそれは決して主流にはなり得ないと思っていたし、実際日常的に使っていても親指によるタッチ操作の方が全然なじんでいた。また、それを容易にするためのアプリもいろいろ出ていた。

いずれスマートフォンの時代になると、その頃からすでに予想されていた。実際Palm社はアメリカではすでにスマートフォンを発売していたが、ついに日本には導入されないまま、先にブームの方が終焉してしまった。

当時の総括としては、結局この手のガジェットを買うのはある限られた範囲の層に過ぎず、一般消費財にはなり得ないということだったように思う。


それだけに現在のスマートフォンブームには複雑な思いがある。

電車の中で見ていると、若い女性のほとんど半分はiPhoneを持っているように思えるし、ニュースなどを見ていると、これからは誰もがスマートフォンを持つかのような論調になっているが、ほんとうにそうなのだろうか?

かつてのPDAブームとその終焉を知っているだけに、そこには懐疑的な思いがどうしても頭をもたげてくる。


実際使ってみればわかるが、スマートフォンなんて決して万人に使いやすいものではない。タッチパネルでの入力には慣れが必要だし、電力消費が激しいのでバッテリは1日持たない。もちろん、そうしたマイナス要因を補ってあまりある多機能性がスマートフォンにはあるわけだが、多機能=汎用的ということは特定の機能に限れば専用機に敵わないということでもある。そこを乗り超えるには、その多機能性を使いこなさなければ意味がないわけだが、ほとんど大抵のことはケータイで十分済んでしまう昨今、そこまでのニーズを万人が持っているとは思えないのだ。


たぶんスマートフォンというデバイスの本来の市場は、今でもそんなに広いわけではない。ただその市場を爆発的に拡大させたのが他でもないiPhoneだ。iPhoneの登場によって、スマートフォンはおそらくスマートフォンを超えた何かに変貌したと言っていい。

ではiPhoneの何がそうさせたのか? その画面インターフェイスもiPhoneの斬新さのひとつであることは間違いないが、それはあくまでもスマートフォンの外見を魅力的に変えたにすぎない。iPhoneが本当に革新的なのは、マルチタッチスクリーンやモーションセンサー、カメラといった(それ自体は他でも使われている)要素技術を組み合わせながら、スマートフォンというベースの上にまったく新しい、かつ極めてユーザーフレンドリーなプラットホームを実現したことだろう。そこに例えばセカイカメラのような先進的なアプリが乗っかることによって、これまでになかったまったく新しいデバイスが誕生したということではないだろうか。

そうしてiPhoneが切り開いた市場は、もはやスマートフォンの市場ではないと思う。そう考えれば、かつてのPDAブームとは異なって急速に拡大をつづける現在のスマートフォンブームにも納得はいく。

そういう意味では、いま重要なのは実は「スマートフォン」ではなく、あくまでも「iPhone」なのだということになるのだが。


ところで、iPhone(やそれを追いかけるandroidフォン)がどこまで普及するか、その分水嶺は今後主婦層が動くかどうかにある、とぼくは思っている。


最近のある調査では、10代から40代の主婦644人に聞いたところ、スマートフォンの所有者は2.6%だったそうだ。非所有者の興味度は、「すごく興味がある+興味がある」37.7%に対し、「あまり興味はない+興味はない」が50.7%。スマートフォンにしない理由としては、トップの「端末の価格が高い」32.9%にほとんど並ぶかたちで、「何ができるかよく分からない」「今の携帯電話に満足している」がともに2位(32.4%)となっている。

(出典: MMD研究所)

たとえiPhoneの革新性をもってしても、主婦層に定着するところまで拡大するかはアヤシイ、と思うのだがどうだろうか。主婦層に定着するためには、エンターテイメント性やガジェットとしての面白さだけでは十分ではない。日常の中にとけこんだ必要不可欠なツールとして進化することが必要だし、iPhoneであれスマートフォンであれ、決してそうした存在にはなりえないと思うのだが・・・。