2010年6月19日土曜日

個客代理人4--もう広告もプロモーションもいらない?

4.プロモーションはなぜ必要なのか

いずれの例でも、問われているのは「プロモーション」の意義だ。


そもそもぼくたちは何故プロモーションを必要としているのだろうか。

一般に、プロモーションの目的は「周知促進」と「需要喚起」だ。市場投入時にいかに商品を広く知らしめるか、また市場投入後一定期間たって売れ行きが落ち着いてきた商品や、そもそもあまり売れない商品をいかにして押し込むか、それがプロモーションの役割だ。


実は、そこには「客がどこにいるのかわからない」という前提がある。買ってくれる客はどこにいるのか。それがわからないからぼくたちは市場調査にコストをかける。だが、市場調査では元来現在のことしかわからない。まだ市場に出してもいない商品について聞かれたところで、それがほしいかどうか、実際に買うかどうかなど当の消費者にだってわかるはずがないからだ(かつて携帯電話会社がユーザー調査で「携帯電話にカメラをつけたらどうか」と問うたとき、欲しいと答えたユーザーは少数だったというのは有名な話だ)。結局ぼくたちは、暗闇に向かって投網をかけるようなものと知りながら、大金を投じて広告を出したり、店頭にキャンペーンガールを置いて販売促進を行う(「広告の半分がムダだということはわかっているが、どちらの半分がムダなのかがわからない」というのもまた有名な言葉だ)。


だが「客がどこにいるのかわからない」とは結局、まず商品があって次にそれをどう売るかを考える、という思考スタイルが必然的に生み出す問題ではないだろうか。


これはマーケティングの4P(wikipedia:マーケティングミックス)に忠実に沿ってはいる。まず商品がある。商品そのもの(Product)と価格(Price)だ。次に売り方がある。つまり流通戦略(Place)とプロモーション(Promotion)というわけだ。

もちろんそれぞれの過程で、ユーザーニーズを探るために市場調査を実施し、ユーザーニーズに応えるために商品企画を行い、ユーザーの心に届かせるために広告表現に工夫を凝らす。それらの一連の行為をぼくたちは「マーケットイン」と呼び、「コンシューマ・インサイト」と呼んでいるのだが、起点は今も「商品」なのだとすればそれは依然として「プロダクトアウト」ではないか。


考え方の順番を逆転させてみたらどうだろう。つまり、まず顧客との接点があり、実際の顧客がいる。そこから彼(女)がどんな商品を必要としているのかが逆方向に導き出されてくる。そんなビジネスは可能だろうか。